2013年11月13日

歯痛・眼の圧迫感〜奇経八脈を用いた補助治療〜

右上歯(歯茎も)痛+知覚過敏、眼球(瞼)の圧迫感を主訴とする患者さんが来院されました。
右悸肋部に圧痛、斎を中心とした半径10センチ程度の冷硬積が認められました。
治療前には不定愁訴のような、ハッキリとしない胃のムカムカも生じていました。

【バイタル】 脈77回/分 血圧134〜78mmhg

【脈診】 陽実はなし 右寸口ー3 関上ー2

【腹診】 肝積肺虚証 右悸肋部(肋骨上圧痛も)・左腹哀

【指標】
BL-52(R)、仙骨から両臀部にかけての押痛(第2仙骨から腸骨稜にかけて)、足部屈伸時における下腿の外側のこわばり・虚脱感

【治療】 第3方式 2行線⇒督脈

【補助治療】
鳩杞穴知熱灸2壮(臀部への押痛は和らいだ)。
斎周辺の積は緩んだが、悸肋部の積と下腿外側の屈伸時のこわばりは残った。
*ここで治療を終了してもよかったのかも知れませんが、右悸肋をもう少し緩められないかと難経27・28・29難より、奇経治療(二経治療)を試みてみました。

【補助治療2】
・右上歯(歯茎)の痛み、胃のムカムカ、下腿外側の運動の異常などより、症状からの仮説として、足陽明の二経治療を試みた。
・磁力テスト・・・右陥谷に+、右合谷にーを貼り付け、腹部の変化を確認した。

悸肋部に若干術者の指の沈みを認めたが、まだ患者を感動させるレベルではないと判断した。
その後何度か陥谷・合谷の左右の組み合わせを試行した結果、右合谷・左陥谷の組み合わせ時に患者も驚くほどの悸肋部の緩みが生じた。

今回は陥谷⇒合谷ライン(足陽明)である為、陥谷を主穴、合谷を客穴として治療を行った。

【結果】
目の圧迫感は多少取れたもののまだ残る。 下腿外側のこわばり・虚脱感はなくなった。
上歯の痛みもなくなった。

【考察】
このような補助治療はいかがなものかと思いましたが、術者が学んだ奇経治療の概念的なものとしては、全身治療後の補助的使用をすすめていることもあり試行してみました。

もちろん患者さんには積聚治療をメインにした全身的な改善を継続させる必要性を伝えました。
今回は納得してもらえる結果がでましたが、奇経のややこしい流注や症状に対する読みが外れてしまえば
ただ手足に石をペタペタ貼っただけの変な鍼灸師と思われかねません。

ただ奇経治療においては変化に対して即効性があるということ、また積聚治療と同じく腹部の変化を基本とすることから、使い方によっては患者さんの病態を把握する為のセカンドオピニオンとしても有効と考えます(別アングルからの病態考として)。

積聚治療の補助治療とするには、まだまだ研究する点もありますが、機会があればまた臨床で用いたいと思います 。
posted by はなのやま at 13:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 積聚治療・古典臨床

2013年10月22日

傷寒(外感)の傷寒(風寒)~難経からの考察~

左足の第3趾の第2衝陽〜第2内庭までの脱力感と関節の動作違和感と押痛、そして顔のほてりと両足の冷え
を訴える女性が来院されました。

【患者】 女性(37歳)

【主訴】
@足第3趾の違和感  
A足の冷え・顔のほてり(就寝時寝つけない)
B汗をかかない(風呂でも) 
C肌が乾燥し、痒みが出る時もある
D声が小さくなった(声を出しづらい)←呼吸に関係?


【状況】
足湯やソックス2枚履き、下腹部にカイロ、温飲食を心がけるなど、体を温めることに気をつけて努力してはいたが、急な用事などで、深夜まで外出することもあり、カゼの症状も持つ人と長時間過ごすこともあった。

就寝時、今まで気にならなかった足の冷えと上半身(顔)のほてりを感じ出し、眠りにつきにくいこともあった。

中脘〜臍周辺の腹部を軽く触診すると、胃から食道にかけての込み上げるような不快感を訴えた。
腹部・背部とも冷えており、下腹部は際立って湿熱を持っていた。

【バイタル】 脈拍 72回/分 血圧129〜79 結・代ともに無し

【脈診】 陽実は無し 右 寸口ー2 関上ー2

【腹診】 肺積肝虚証〜左悸肋部(骨上)、右梁門・腹哀 〜

【治療】積聚治療  第1方式 2行線、督脈
背部兪穴刺鍼中に背の冷えがとれ、汗ばんできた。
督脈の刺鍼で腰部の硬さも緩んだ。

【補助治療における考察】
難経より、・両足が冷える・皮膚熱して、しとね(寝床)につけない・毛髪は潤いがなく、鼻(呼吸器)乾き、汗をかかない、など彼女の症状が58難の「広義の傷寒」の中の風寒(狭義の傷寒)に当てはまる部分が多く、冬の深夜、カゼを引いた人と長時間過ごしたことにより、風邪・寒邪の極悪コンビに皮毛が痛めつけられた外感病(傷寒病)であると捉えた。

左右の肩甲間部を脊際より2行線まで触診し、右の風門に強硬結を見つけ、左右の風門へ透熱灸左5壮・右10壮を行った。右風門はなかなか熱さを感じず、10壮目の灸で硬結が緩んだように感じた。

【術後】
左悸肋部に少し押痛は残るが、腹部の肺積はゆるみ、全体に温かくなった。

下腹部の熱感はまだ残った。

左足第3趾の動作時の違和感・痛みは消失した。

「背もゆるみ、体が温かくなった。」

カゼの初期症状である可能性を告げ、習慣であるヨーグルトを控える、汗をかくこと、などの養生を薦めた。

【考察】
左第3趾の痛み:第3趾を第2胃経と考え、風寒邪が陽経の経絡に停留したものと考えた。
陽明に停留ということは、皮毛より徐々に肌肉(胃腸)へ進行してしまった可能性も考えられる。

術中に、「昨日頭痛も発症していた」ことを告げられ、おそらくそれは難経60難でいう厥逆頭痛であったのでは、と考えた。(術中、腹臥位時に、手三陽の指の違和感を問うたが、やはりこわばり曲げにくさがあるとのことであった)

外感病の初期には寸口の脈が浮き実性を持つことが多いとされるが、彼女の場合は沈・濡脈であった。
が、難経16難の「(ちっちゃなことは気にすんな)脈を捨て証に従え」より、反応のあった風門への施灸を決定した。

【追記】
現代的に素直に考察できる病症においては、無理に古典のフィルターを通さずともよい気がする。
が、やはり実践で古典を応用することは臨床家として興味がある。

まだまだ浅学であり、古典の応用に関しては完璧というわけにはいきませんが、
これからも機会があれば、
時間の経過とともに複雑な症状が多岐にわたるような場合など症状の考察などにどんどん古典を応用していきたいと思います 。

江戸川区北小岩 千葉県山武市
はなのやま鍼灸院 http://hananoyama-hariq.com
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2013年10月10日

心積腎虚証〜難経56難より〜

心積腎虚証〜難経56難より〜

昨日からの胸苦しさとムカムカ感、鳩尾(みぞおち)にボールでも入っているかのような膨満感を訴える患者さんが来院されました。

患者 37歳女性

【既往】
過去3度の自動車事故により頚部〜右腕にコップが持てないくらいの握力低下などの頚腕神経の症状が出現。
整形外科にて長期のリハビリを行い、日常生活に支障をきたさない程度には回復した。
以来、不眠・強い偏頭痛など自律神経失調の症状も併発しており、さらに逆流性食道炎を患い、強い吐き気が一日中続くこともあり、昨年8月に当院に来院された(今回で113診目)。

【経過】
第1診より積聚治療を行い、偏頭痛・不眠はほとんど出現しなくなった。

時折出現しても本人が発症原因を考えられるようになってきており、また食事や睡眠、冷えに関しての注意も高まっていて治療の数日後には改善されることが多くなった。

食道からの込み上げる嘔気やムカムカ感も出現したり、改善したりを繰り返していたが、この夏の自身の生活環境の変化もあり、だいぶ発症は抑えられている感じであった。

時折「車のハンドルを持つ力もない」との頚腕の症状も出るが、背部の治療にて精気の虚を補うことで、腹臥位術中に改善される位変化しやすい状態となった。

【治療】
今回の上腹部の膨満やムカムカの原因は不明(本人思い当たる節がない)

脈70回/分 血圧136/76

脈診:陽実はなし 右寸口・関上ともにー2

腹診:心積(球状:鳩尾〜上脘にかけてドラゴンボール大)

過去の治療においてはほぼ腎積であることが多く、今回の発症原因を考えながら行った。
いつものように背部兪穴の接触鍼中に何か閃くようなものを感じ、難経56難より「秋の心積ならば腎虚からの可能性もある」との考察から、心積腎虚証(第1方式)で刺鍼を行った。

2行線⇒督脈の2穴目でBL-52がゆるんだが、周辺にはまだ冷たさと硬さが残っていたので命門穴に透熱灸を施灸し10壮目で腰部全体のゆるさが現れた。

顔面の胃経のツボを指標にB・ST-7(R)に刺鍼、

座位にてGB-21(R)に刺鍼を行い残積にアプローチして治療を終えた。

【術後】
「腹臥位時にはボールに圧迫されるような苦しさがあったが術中に消失するのを感じた。
胃のムカムカも消え、すっきりした。」

【考察】
難経56難の秋に心積が形成される理論に当てはめなくとも心積においては極めて一時的なモノが表面に出現し、そのすぐ下に腎積が隠れていた可能性も考えられる。また腹診で深層の腎積を見抜けた可能性もある。

神様でなければ(タイムマシンを用いた比較ができなければ)本当の結論を出すのは困難かも知れませんが、患者さんが楽になって帰っていただければとりあえず”良し”ということで。

学術的な根拠も乏しく、独りよがりになってしまいましたが、
機会があればまた56難に基づいたアプローチを行って行きたいと思います。

失恋以外で、失恋が原因でも
秋の胸苦しさを感じている方は陰陽五行に基づく東洋的な治療をぜひお試しください。

はなのやま鍼灸院 http://hananoyama-hariq.com
posted by はなのやま at 01:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 積聚治療・古典臨床